こんにちは。
絶賛、マイホームを計画中の「ゆうき」です。
一級建築士として、現場監督や設計、工事監理の経験が10年以上あります。
- カーポートって建築確認申請は出さなきゃダメ?
- 建ぺい率がオーバーしてしまいそうだから、カーポートを後から建てたいけどOK?
- カーポートを建てて、建ぺい率をオーバーするとどうなるの?
こんな悩みを解決します。
第一種低層住居専用地域など、制限が厳しい用途地域内に建てる場合は、建ぺい率の制限が足かせになる場合があります。
場所によっては、建ぺい率の制限が40%という土地も少なくありません。
実際に私が建てる土地も第一種低層住居専用地域で建ぺい率の制限が40%です…。
よくあるのが、「建ぺい率がオーバーしてしまうので、カーポートは役所の完了検査が終わってからご自身で建ててください」と工務店やハウスメーカーから言われるケース。
でもそれって法律違反なんじゃ…。
そんなことして大丈夫なの?
と不安に思っている方も多いと思います。
この記事では、カーポートは建築確認申請が必要なのか、建ぺい率をオーバーしてカーポートを後から建てた場合どうなるのかということを深堀りして解説します!
実際に役所で違反建築物の取り締まりを業務として行っている知人から聞いた話も織り交ぜて書いていますよ。
建築基準法のやや深い話もありますが、なるべくわかりやすく書きましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
それでは、続きをどうぞ。
こんな方におすすめ
- 建ぺい率がオーバーしてしまいそう(オーバーしている)
- 確認申請を出さないでカーポートを建てようと思っている(建ててしまった)
- 確認申請を出さなかったらどうなるのか知りたい
タップできる目次
カーポートの建築確認申請は不要?【カーポートは原則、確認申請が必要!】
結論からいうと、「カーポートは、原則、確認申請が必要」です。
建築基準法では、床面積が10㎡を超える建築物の増築は確認申請が必要と定められています。(防火地域内、準防火地域内は10㎡以下でも必要。)
カーポートは、土地に定着し柱と屋根があるので「建築物」に該当します。
しかもカーポートの大きさは10㎡を超えることがほとんどなので、原則、確認申請が必要となるということです。
ちなみに「原則」と書いてあるのは、建てる場所によって申請が不要な場合があるからです。
例えば、建てる場所が都市計画区域外の場合は、4号建築物と言われる小規模な建築物(木造2階建て以下等)は、確認申請が不要です。
これらは都市計画法で定められており、役所のHPの都市計画を所管している部署のページに記載がありますので、確認してみてください。
カーポートの建築確認申請は不要?【よくある事例】
それでは、ひとつ例をあげてこの「カーポートは後から建てても大丈夫なの問題」を解説していきます。
よくある事例
- 用途地域→第一種低層住居専用地域
- 建ぺい率の制限→40%
- カーポートなしだと建ぺい率はクリアする(37%)
- カーポートを建てると建ぺい率がオーバーする(42%)
- 工務店に「カーポートを入れて確認申請を提出すると下りないので、カーポートは後からご自身で建ててください」と言われた
- さらに「カーポートの確認申請なんて誰も出してないよ」とも言われた
それでは、このケースを例にあげて解説していきます。
カーポートの建築確認申請は不要?【無届けだとどうなる?】
カーポートを後から増築したのに確認申請を提出しなかったらどうなってしまうのでしょうか。
順をおって解説していきます。
1.手続き違反になる
まずは先に書いたように、カーポートはほとんどの場合で確認申請が必要となります。
なので確認申請が必要なのに提出しない場合は、建築基準法第6条違反(確認申請の手続き違反)となってしまいます。
手続き違反とは?
確認申請や用途変更申請、許可申請などの手続きについて書かれた規定を守らなかった場合に「手続き違反」という言い方をする。
法律内に「手続き違反」という言葉は出てこないが、違反の種別を使い分けるために使用される。
2.実態違反になる
さらにこの事例の場合は、建ぺい率をオーバーしているので、建築基準法第53条違反(建ぺい率オーバーの実態違反)にもなってしまいます。
実態違反とは?
手続き違反とは違い、「実質的な違反がある状態」のことを言う。
役所から違反建築物としてマークされ、行政指導の対象となる。
役所が違反建築物として行政指導をするかどうかは、「実態違反があるかどうか」が重要なポイント。
「手続き違反はあるけど、実態違反がない場合」については、役所による行政指導の程度が変わってきますので、それは後ほど解説しますね。
3.集団規定に違反する
建築基準法には大きく分けて、
- 単体規定
- 集団規定
の2種類の規定があります。
「単体規定」は、その名のとおり建物単体にかけられた規定です。
例を上げると、構造や採光、換気、内装制限などがそれに当たります。
対して「集団規定」とは、周辺環境へ悪影響を及ぼさないように配慮するために定められた規定です。
こちらも例を上げると、建ぺい率や容積率、高さ制限、北側斜線制限などがあります。
そのため、今回の事例の建ぺい率オーバーは、「集団規定の違反」に該当することになってしまうんですね…。
4.集団規定の違反は重い!
これはあまり知られていないことなのですが、「単体規定の違反」と「集団規定の違反」を比較した場合、役所は「集団規定の方が重い」と考えているということ。
単体規定の違反は、何かあったときに住んでいる本人が困るだけです。
それに対して集団規定の違反は、周辺環境に悪影響を及ぼす(隣地の日当たりが悪くなるなど)場合が多いので、より重点的に違反指導をする場合が多いと言われています。
「カーポートの確認申請は、みんな出してないから大丈夫」と甘く考えていると痛い目にあいますよ。
5.売るときに困る
最後に、今回の事例のように建ぺい率をオーバーしている場合、売却するときに売れなくなる可能性があります。
不動産業者は、重要事項説明書に建ぺい率をオーバーしているということや違反建築物であるという「建築物の瑕疵」を記載する義務があります。
「カーポートの検査済証は紛失した」と嘘をついても、不動産業者に役所へ台帳記載証明を取得しにいかれるとすぐに検査済証が発行されていないということがバレます。
しかも、検査済証がない物件は融資自体が受けられない場合がほとんどなので、売りたくても売れないということになりかねません。
台帳記載証明とは?
確認申請や検査済証が発行された記録があるかどうかを証明する書類。
確認済証や検査済証をなくしても、この証明書を取得すれば融資を受けられる。
役所の建築指導を所管している部署で発行している場合が多い。
家を建てるときに売ることを考える人はあまりいませんが、人生何が起こるかわかりませんからね…。
カーポートの建築確認申請は不要?【他の事例】
次に、他の事例を紹介します。
1.実態違反がないケース
建ぺい率はクリアするけど、申請手続きの費用がもったいないという理由から確認申請を提出したくないというケースも考えられます。
手続き違反だけで実態違反がない場合は、完成してしまえば違反建築物としてマークされることはありません。
役所によって対応は違うと思われますが、完成してから見つかった場合「次からはちゃんと確認申請出してくださいね」と口頭で注意される程度です。
ここが手続き違反と実態違反の大きな違いですね。
もちろん、違反を推奨しているわけではないですが、実態違反がなければほとんどの場合問題ありません。
ただ、行政指導を受けることはなくても、検査済証がないので、「売りたいけど売れない」ということは大いに考えられます。
2.都市計画区域外に建てたケース
一番最初に説明したように、都市計画区域外でカーポートを増築した場合は、確認申請が不要と考えていいです。
都市計画区域外は、用途地域の指定がないので建ぺい率の制限がない場合がほとんど。
建ぺい率の制限がないということは、敷地目一杯に建築物を建てられるということです。
ただし、行政によっては条例などで様々な制限を設けているところもあるので、建てる場所の行政庁に確認が必要です。
カーポートの建築確認申請は不要?【どうやってバレる?】
それでは、確認申請を出さないでこっそり建てているのに、どうやってバレるのでしょうか?
3つのケースが考えられます。
バレるケース3つ
- 近隣住民からの通報される
- 行政によるパトロールで発見される
- 行政の建築職員の通勤経路で発見される
ひとつずつ解説します。
1.近隣住民から通報される
工事が終わって、工務店が設置した仮設トイレや資材が引き下げられたあとにカーポートだけ建て始めると「あれ?工事終わったんじゃないの?」と近隣住民から不思議がられることがあります。
特に建築に詳しい近隣住民がいると、「確認申請を出さないでカーポートを建てているのでは?」と感づかれる可能性が高いです。
そういう人から行政へ通報が入ると、行政は放置しておくわけにはいかず、必ず動きます。
これによって発覚するケースが最も多いと考えられますね。
2.行政によるパトロールで発見される
行政によってまちまちですが、定期的に違反パトロールを実施している行政庁があり、そのパトロール中にたまたま建築中で見つかるケースが考えられます。
確認申請を提出していないので、建築基準法第89条で定められている「確認済みの表示」の看板を掲示できないので、すぐバレます。
確認済みの表示とは?
確認済証の番号や建築主、工事監理者、工事施工者などが記載された以下の看板のこと。
しかし、パトロールをやっている時期は限られているので、数日で完成してしまうカーポートが工事中に発見される可能性は低いと言えそうです。
3.行政の建築職員の通勤経路で発見される
これはかなり運が悪いケースですが、ありえない話ではありません。
上記で書いた「確認済みの表示」が掲示されていないなか工事をやっていると、まずは手続き違反を疑います。
民間の検査機関に提出された確認申請なども行政の職員は調べることが可能なため、「調べれば確認申請が出ているか出ていないかはすぐにわかる」とのこと。
どこで行政職員が見ているかわかりませんよ…。
カーポートの建築確認申請は不要?【まとめ】
実際、建ぺい率がオーバーしてしまうという理由から、カーポートを後から建ててしまうというのは本当によくある話です。
ただし、書いたように法律に違反するということは、それに伴うリスクが発生します。
工務店やハウスメーカーは自分の責任にならないので、好き勝手なことを言うんですよね…。
最終的に全責任は、建築主であるあなたが負わなければならないということを肝に命じましょう。
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